宿舎の使い方の説明を受け、参加者パスを受け取り、しばし待機後、時間となった。いよいよ、である。
19日(到着日)&20日(仕込み1日目)、合わせて計6作品の観劇。ありがた&忙し&仕込み時間ピンチw
観劇1 17時 紙風船(山口) @利賀山房
コンクール参加者の作品である。去年の評判通り、ハイクオリティーな作品。ストイックな美しい芝居。
うちとジャンルも作品も全然違うけど、自分がこの作品をやったらこんな風に処理できないと思った。
女優さんが超うますぎる。俳優さんもうまかったが、何と言っても、女優さんの虚構化されたしっとりとした存在とドライな演技がやばい。あと、彼女の声が美しかった。よく通る声だし。熟練……って感じ。目を瞑って声だけ聞いてたときもある。顔見てやや残念。顔が酷いのでなく、声が美しすぎるのだ。
途中音楽がかかって、夫婦の寝転がって退屈そうな表現の足の動きのシンクロが面白く、ふと、鈴木作品のシラノの女コロスのナンバーっぽいなぁと思ってしまった。
ただ、最初から紙風船を妻が持ってたのは議論呼ぶんじゃないかな。妻が割って壊すのを現代的な強い女性の意だとしても、新聞紙で風船を作って男が差し出す発想はネタが割れててもいいんだけども。
観劇後、夕食もぐもぐ。そして再び観劇。
観劇地獄ではあるが、金のない私にとってはまたとないありがたい機会である。
観劇2 19時半 シラノ・ド・ベルジュラック @野外劇場
本部で雨合羽を無料配布していたが、大丈夫だろうと根拠のない思い込みで貰わず。
だがさすが現地スタッフ。上演途中から雨。観客はがさごそ雨具を取り出す。私はあきらめw
舞台照明に当たる雨を見て、結構降ってる?と思ったら、客席はそうでもない。
私だけでなく、他の観客もそう思ったらしく、ちらほら至る所で、上を向き、手のひらをかざしている。
その間にも舞台は続行。雨も続行w
雨で足場が悪かろうと、女コロスは次々と独特な動きやポーズを決めていく。本当に素晴らしい。実は、打ち上がる花火よりも私にとってはお目当て。というのも、新国立劇場で観たシラノの印象が強く残っているため、盛大な大量の花火でなく無数の花びらのほうが個人的に好きなのである。ところがどっこい今年は、花火は花火でいいかもしれぬと思ってしまった。エンディングのナイアガラのせいだと思う。
しかし今回残念ながら?、女コロスや花火よりも印象に残ってしまったことがある。
それは、蛾である。でっかい白い蛾が床にぺたんぺたんしてるのである。
こともあろうに奴は、主演俳優の左袖に止まり、じわじわとのぼり、左肩・首後ろを通って右肩へ。しかし彼は科白を続ける。蛾を払うような素振りを一切見せず、微動だにせず。ナウシカのテト(キツネリス)みたいだが、あきらかに手のひら大の蛾w あの状況にうちの出演者が陥ったら……と思うとぞっとした。
終演後、私以外のメンバー全員、帰っていった。
というのも、満席で、既に代表者しか観劇出来ない状況だったのである。
正直な話、次の作品こそ、皆に観てほしかった。
去年、「新・帰ってきた日本」を利賀で観た。
自分らの作品発表を終えて東京へ戻り、しばしして何人かで再び利賀入りしたのである。
伊藤が諸事情で同行せず、激しくがっかりしたのを今でも覚えている。だから彼には特に観せたかった。
率直に言えば、何十年もやり続けている、世界に誇る訓練<スズキ・メソッド>が、他者から見ればどれだけ滑稽であるか、分かってなければとてもじゃないが創れない作品だと思う。究極の異化効果というか。
鈴木忠志という演出家がいかにシタタカなやり手であるか。恐ろしく若いセンス。それでいて古く懐かしい。
勝てない。何をやっても勝てない。
技術も経験も人脈も師匠もないペーペーの演出家志望の当時26歳の男が何を言うかって感じだが。
あのとき、客席の反応を観て、数週間前にこの地で発表した自分らの「コーラス・ガール」を思い出した。
チェーホフ作品のフツーの科白を、コロスが物々しく奇妙な動き(他者にとっては)をしながら発した。
客席からは笑い声が聞こえ、ロシア人観客には「スパシーバ(ロシア語でありがとう)」と言われた。
審査員の指摘を改善できぬまま、利賀での発表1週間後に(渋谷のギャラリー・ルデコで)再演したが、
とてつもない爆笑の渦であった。
その意味が、ようやく分かったのである。
自分がその数週間後、「新・帰ってきた日本」の客席で、他の観客とともに爆笑したことで。
おっと、去年(2010年)の回想はこれくらいにして今年に戻ろう。
観劇3 22時 新々・帰ってきた日本 @岩舞台
相変わらずの雨なので、本部で無料配布してた雨合羽をいただく。
作品は去年に引き続きって感じ。本当にタイトルの一部が同じなだけあって、衣装も同じ。最高(笑
去年のような、動きによる面白さはそれほど感じなかったが、それでも面白い。この面白さは科白の文章とその言い廻しとキャラクターにあるのか? 去年のほうが好きだが、今年のだって充分すぎる。
シュールだった。やっぱり、他者にどう映るか、世界観と調和させながらしっかり遊んでいる気がする。
くそー。稽古が見たくて仕方ない。色々聞きたくて仕方ない。無理だろーけど。
余談だが、舞台美術にちょっと、いや、実を言うとかなり動揺した。舞台中央の提灯にカタカナで『モンロー』と書いてある。今回発表した作品に、モンローの有名な場面を利用した演出があったからである。
演者の動作でさすがだなって思ったのは、看護婦姿のお姉さんと、兄貴w
兄貴は、あの雨の中、高速で軽快に、一段一段高さのある階段を駆け下りた。転倒しないのは、上から床を踏み鳴らす感じで一歩一歩、歩を進めるからだろう。だがあの速さは怖い。ついつい進もうと前へ前へ重心かけたらやばいと思われ。この歩行に(走らないけど)やや近いのは、今回発表した作品の役ではゴールディであろう。稽古場で、能の歩行やその訓練の仕方を意識して、あれこれ指摘していたのだ。死神のイメージがあったしね。
お姉さんは、お酌しに行くときのあの独特の歩行。腰くねくね歩行&ぴたっのループ。あれ、真似できない。難しい。原理が分からない。あの動きだけで、敗北を感じずにはいられない。というのも、今回発表した作品にオカマだかゲイだか分からぬコロス(いかついキューピー)が4人登場するのだが、その動きにそのまま流用できるかのような動きだったのだ。ぐふっ……。
歌謡曲に合わせてその歌詞を発するのは、去年も見たし、自分らも結構前からやっている手法だった。柴幸男がラップを取り入れて有名になる前から、こちらはエセラップではあるが……。チャリT企画の代表さんが、うちのその手法を見て、アングラップってどう?って一方的にネーミングをつけてきたこともある。
終演後、ボルカノで、この日観たコンクール作品についての、審査員の講評を(勉強になるし)盗み聞こうと思いもしたが、単身で乗り込む勇気もなければ、観たばかりの「新々・帰ってきた日本」で思ったことを参考になるだろう役者に伝えようと、迎えの車を呼ばず、徒歩で宿舎へ戻った。
車だとあっという間だが、歩きだと意外とかかる。真っ暗なのに、懐中電灯持たずに気合で歩いて、無事辿り着くことに成功した。
左はその際に撮った看板。ファイル名を見るに、23時19分54秒撮影のようだ。
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